Snow Soul Records

最近Youtubeネタのサルベージばかり。

チャック・ジョーンズさん

2007.08.06

category : music

僕が子供の頃は、子供達が学校から帰って一息つく時間を狙って、TVでは必ずアニメを放送していた。夕方の5時から6時の間なんだけど、きっとこれは母親が晩ご飯を作る時間なわけで、子供がヒマにしていると邪魔になるので、そういう需要があったんだろうね。今はどうなんだろ?夕方やっているのかな。深夜と日曜の早朝とか、どうもアニメ自体がチビッ子のモノではなくなったあたりから、放送時間も変わってきた気がするな。あの頃、ルパン三世は夕方やってたけども。


で、その頃(たぶん7歳とか8歳)、夕方の時間帯で「トムとジェリー」を放送していたわけです。「トムとジェリー」はもちろん書くまでもなく米国の映画会社メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)社製作のアニメーションだけど、僕はとても好きで、何度も再放送される度に見ていました。ちなみに、トムとジェリーのそれぞれの本名は、“ジェリー・マウス”と“トーマス・キャット”。トムがトーマス・キャットだってのはあまり知られていないと思います。話が逸れました。で、見たことある人はよく覚えてると思うけど、オープニングは・・・


mgm-8.jpgtom-and-jerry-7.jpg


こんな感じの絵に、陽気な感じのオーケストラのオープニング曲がかかって始まるわけです。で、これも見た事ある人だったらわかっていただけると思うんですが、この作品の魅力は、ドタバタなストーリーより、トムやジェリーの暮らすアメリカ郊外のけっこうアッパーな家庭の風景や、50年代のアメリカのライフスタイルや、ジェリーが狙う食卓のディナーだったりだと思うのです。七面鳥の丸焼きや穴だらけのチーズや、分厚いボーンステーキとかね。おそらく、描かれる風景を見て、漠然とアメリカンライフに憧れを抱いた子供は、この国に相当いると思います。・・・で、だいたい放送時間が晩ご飯前ですので、母親から「ごはんよっ!テレビ消して早くきなさい!」と怒られたりなんかして、自分の食卓にあがっている煮物や、惣菜屋のコロッケなんかを見て“生まれ変わったらアメリカ人になってやる!”なんて思った子供も、相当数いたと確信しています。


・・・また話が逸れましたが、ある日、いつものように学校から帰ってテレビをつけると、いつもの♪ホワンワワン〜ホワンワワン♪テテテテ〜♪というオープニングテーマではなく、かなりファンキーなドラムとホーンが・・・そしてオープニングの絵も↓


volume9-rock-n-rodent.jpg


↑こんなのでした。“いつものトムジェリじゃない!”正直覚えていませんが、多分そんなことくらいしか思わなかったと思います。で、また内容もとってもおかしくて、2人(二匹)が住んでいる家も、マンハッタンなのかロサンゼルスなのかわかりませんが、とにかく都会の高級レジデンスの最上階。いつもの牧歌的な50年代のアメリカの郊外ではなく、高層ビルが乱立する、夜の街でした。色使いも、紫色や茶色、目の覚めるような赤や青など、激しく明滅する原色があふれかえるサイケな世界に、ずっとオープニングのファンク色の強いジャズが鳴りまくってました。(もちろん小学生にそんなことわからないわけですが)ストーリーもぶっ飛んでいて、深夜、トムが寝床で丸まって寝始める頃、壁の穴の中でジェリーが目を覚まします。ジェリーはネズミ専用のエレベーターで高層マンションの地下深くまで降りてゆきます。そしてジェリーが配管がうねる地下深くの小さなドアを開けると、そこは激しくステージライトが明滅するネズミ専用のアングラジャズクラブ。ジェリーはドラムセットの前に座り、狂ったようにドラムを叩きます。ベース、ギター、オルガン、ホーンが奏でるレアグルーヴ(笑)。そしてその音が配管を伝わり、やっと寝付き始めたトムの安眠を妨害して・・・後の展開は、まぁいつものドタバタなんですが、その間もレアグルーヴなジャズファンクが終始鳴っていて、とにかく熱い。で、最後は眠れないまま、朝を迎えたトムが狂って、目が紫色と黄色みたいな常人には思いつかないような色使いでグルグル回って、狂人のように笑いながら、壁をぶち破って、マンハッタンの朝焼けに向かって空中を走り去っていくのを、欠伸しながら寝床に入るジェリーがクールな眼差しで追って終わるんですがね・・・。“こんなのいつものとむとじぇりーじゃないやい!”なんて言えない迫力・・・というより、ものすごく不道徳な感じがしたんですね、当時。


で、最近、TUTAYAでTVシリーズがDVD化されているのに気付き、探してみたら発見しました。その回のタイトルは『ロックンロール騒動』。・・・見ていただいたらわかると思いますが、ガンガン鳴っているのはロックではなくファンキーなジャズなんですが、そういうタイトルでした。僕達が憧れた郊外型のアメリカンライフなシリーズを監督していたのは、トム&ジェリーの生みの親でもある、ハンナ=バーベラという2人組なのですが、本編の監督はチャック・ジョーンズというお方。


CJFilmographyPage.jpg


こんな人です。で、他にもこのチャック・ジョーンズさんが監督されている話が何話かDVD化されておりまして、一通り見たのですが、案の定、どれもこれもおかしくて、使われているBGMも演出も一癖二癖もあるものばかりでした。いろいろ調べてみると、やはりという感じもするけど、トム&ジェリーファンには受け入れてもらえていないようで、むしろ『無理やり自分の世界に当てはめようとした』とか『当時のヒッピームーブメントなどに影響を受けており、ハンナ=バーバラの世界が崩されている』というような評価が多いようです。しかし、このチャック・ジョーンズさんは、実はカートゥーンの世界では非常に有名な方で、代表作は『ルーニー・テューンズ』や『バックス・バニー』。2002年まで存命だったのですが、その後彼のドキュメント映画が製作され、スピルバーグやロビン・ウィリアムスが支持を表明していたり、実は評価の高いアーティストだったんですね。


academychuckjones.jpg


・・・というような話は余談でして、とにかくトム&ジェリーは、子供心に“ワインや七面鳥やボーンステーキのある食卓”への憧れと、“自分の家の全体的に茶色系な食卓”へのやり場のない軽い怒りを植えつけられたのと同時に、僕の中ではそこはかとなく“音楽ってカッコいい”という、字で書くと恥ずかしいけど、今の自分の趣向の原点みたいなものが生まれた瞬間だったと、まぁそんな話です。

追記:トム&ジェリーには、また違った意味でヘンなシリーズが存在します。アメリカではなく、今でこそアートアニメーションの世界では有名ですが、当時まだ鉄のカーテンに囲われていた東欧の国チェコで製作されたシリーズです。それはまたいつか改めてエントリしようと思ってます。

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